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日本音楽学会第50回全国大会

企画趣旨


last modified: 99.9.7


 1999年度の全国大会は表だった統一テーマは掲げません。統一テーマによるシンポジウムも設けません。テーマ云々よりも議論の方法を見直したい、というのがその理由です。かねてより、学会は専門的な研究者の集まりであるのだから、研究者がそれぞれの分野で本当に専門的な議論を行ったり、自由に情報や意見の交換ができる場がもっと欲しい、という声がありました。そこで、かなり限定されたテーマをいくつも設け、司会と数名の発言者の発言を中心としたコロキウム形式により、具体的な議論ができる時間枠を確保することにしました。個別テーマと発言者については企画委員会で検討中ですが(下記参照)、コロキウム単位での公募も致します。コーディネーター役をかって出られる方はふるってご応募ください。このほかの主な企画としては、講演と演奏会を計画しています。自由な研究発表ももちろん従来通り公募します。


 表だった統一テーマが掲げられないとはいえ、今大会は──おそらく昨年の大会が既にそうであったように──2002年の学会創立50周年記念国際大会へ向けての準備、という位置付けで行います(来年と再来年もそうあることを期待しています)。大局的に見れば、現状ではどのような議論もある一定の方向性をもつことが予測されます。それは、20世紀最後の2年を迎えるにあたり、従来の音楽学の回顧と反省、新しい音楽学(もしそのようなものがあるとすれば)の模索を行うということです。ここ数年の大会テーマも結局はこうした共通の問題意識のヴァリエーションだったように思われます。今回も同じ通奏低音上にあるのは言うまでもありませんが、なるべく具体的なテーマに沿って議論したいと思います。今年はまた、新制大学の発足に伴い日本で音楽学の課程が制度化されて50周年にもあたります。日本における音楽学をもう一度回顧する絶好の機会ではないでしょうか。
 講演には、バッハやシュッツ、ヴァーグナーの研究で高名なボーフム大学名誉教授ヴェルナー・ブライク氏をお招きする予定です。特別企画としては、東京藝術大学奏楽堂の新オルガン(ガルニエ・オルガン)によるコンサートと、西洋古典舞踏のデモンストレーション、それに10月に開館予定の東京藝術大学美術館の見学を検討中です。なお、奏楽堂の使用に関わる費用が未定のため、大会参加費はあくまでも予定です。
 企画部会で計画しているコロキウムのコーディネーターとテーマは以下の通りです
(テーマは変更される可能性があります)。

礒山雅:バッハとドレスデン
植村幸生:東アジア宮廷音楽と「近代」
長木誠司:洋楽創作100年における「日本的なるもの」
土田英三郎:ベートーヴェン研究の現在−ダールハウスの提起した諸問題
戸澤義夫:(1) 伊澤修二と近代、または(2) 日本近代における家郷創出と音楽 (教育)
野川美穂子:(1) 日本の語り物音楽の研究方法、または(2) 音楽考古学研究の現状と可能性
森泰彦:モーツァルト研究の動向

文責:大会企画担当 土田英三郎

(『日本音楽学会会報』第46号(1999年5月31日発行)の大会告知から)


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